令和7年(2025)9月23日(火)旧暦8月2日 友引
今朝の撮影 Data SONY α1-2 SONY FE 24-240mm/F3.5-6.3 OSS iPhone 16ProMAX 現像 Adobe PhotoshopLightroomCC 撮影枚数xx枚
- 瑞風の夜明け -
おはようございます。昨夜の「瑞風」は午後9時29分に米子駅へと到着し、そのままホームに停車したまま夜を過ごしました。おかげさまで列車は微動だにせず、陸にいるのと変わらぬ静けさの中、あほまろは久々に熟睡することができましたよ。列車に揺られて眠るのも旅の醍醐味ではありますが、こうして安眠を保証されるのも、さすがは豪華列車の心遣いというものでしょう。 朝は5時前に目を覚まし、ひと風呂浴びてすっきり爽快。まだ外は真っ暗で、しかもドアは閉ざされたまま。せっかくの米子駅の姿をカメラに収めることができなかったのは残念ですが、その分、心静かに「旅の夜明け」を感じることができました。やがて午前5時44分、「瑞風」は鳥取に向けてゆっくりと動き出し、あほまろは揺れる車内で日記を綴っております。 ところで出発地の下関駅には、他の主要駅にあるような立派な瑞風ラウンジはございません。その代わり、ホーム上にソファーが並べられ、即席のラウンジとなっておりました。これもまた下関らしい「人情対応」と申しますか、豪華さより温かみを感じる演出でございましたよ。 今回の「瑞風」の旅は、下関発の一泊二日コース。下関から新山口を経て山陰本線へと抜けるルートですが、昨年8月の豪雨で被害を受けたため、しばらくは山口線を経由して日本海へ出る特別ルートを走っていたそうです。その山口線経由も今回が最終回。まさに「ラストラン」に同席できたのもまた旅の縁でございましょう。鉄道ファンとしては、こうした「最後の記録」に立ち会えるのは、この上ない栄誉なのです。 車内をご覧下さい。こちらが居間です。 その奥が寝室。 広いバスルーム。 車内には、バーカウンターもありますが、酒を断ったあほまろには無関係な所ですが、写真だけ撮らせていただきましたよ。 思えば、瑞風乗車5回目のあほまろですが、下関駅から乗車するのは今回が初めてなのです。出発前には、名誉駅長を務める元気いっぱいのお嬢さんが笑顔でお見送りをしてくれました。瑞風は18歳未満の乗車は叶いませんが、あの姿を見ていると「いつか大きくなったら、今度はクルーとして皆を迎えるのではないか」と思わず期待してしまいましたよ。鉄道の未来は、こうして小さな出会いから紡がれていくのかもしれませんね。 下関駅9時28分出発です。名誉駅長さんありがとう、行ってきます。 日本海側に出ると、展望デッキからは視界いっぱいに青く輝く海が広がっておりました。列車がカーブを描くたびに、エメラルド色の波が岩肌に砕け散り、白い飛沫をあげる光景が次々と現れます。 瑞風の深いグリーンの車体越しに眺める日本海は、どこか特別な舞台装置のようで、ただ立っているだけで胸が高鳴りましたよ。 「瑞風に 夢を乗せたる 旅路かな 時を忘れて 海原ぞ見る」(阿呆人也) せわしい日常では決して味わえない、時間の流れがゆるやかにほどけていく感覚。潮風に包まれながら、あほまろは夢中になってシャッターを切り続けました。波打ち際の表情は一瞬ごとに変わり、光と影の加減でまるで別の世界が映し出されていきます。 昼食までのひととき、ただひたすらにカメラを構えていたあほまろ。まるで日本海そのものが旅の記憶をフィルムに刻んでほしいと語りかけてくるかのようでした。 やがてカメラを下ろし、ふと潮風を胸いっぱいに吸い込んだとき、旅の幸福はこうした一瞬一瞬の積み重ねにあるのだと、改めて思い知らされたのでございます。 今日の立ち寄り観光地は、温泉津駅から「瑞風」専用バスに乗り込み、世界遺産・石見銀山の街並みを散策する行程でした。 駅前では地元の皆さんが横断幕や笑顔で出迎えてくださり、まるでお祭りのような温かな歓迎に、あほまろの心も自然とほころびましたよ。 「駅ごとに 笑顔で迎え 送られて 記憶の環は 心に残る」(阿呆人也) 瑞風に乗るたび感じることですが、この列車は車窓の風景だけでなく、地域の人々とのふれあいそのものが旅の醍醐味なのですよね。 バスは緑深い山間を抜け、銀の都として栄えた往時の趣を今に残す石見銀山へ。そこには、江戸の面影を宿した町家や、昭和の初めを思わせる理髪店の佇まい、赤い丸ポストが映える大森郵便局など、時間の流れに逆らわず静かに呼吸を続ける建物が点在していました。石畳を踏みしめながら歩いていると、ふと鉱夫たちの笑い声や、銀を運ぶ馬の蹄の音が風に乗って聞こえてくるような錯覚さえ覚えます。 また、岩肌に刻まれた小さなお堂や祠も道すがらに点在しており、この地で暮らした人々が日々祈りを捧げ、自然とともに歩んできたことを物語っていました。時の流れは確かに現代へと繋がっているのですが、ここ石見銀山では、過去と現在が重なり合い、どこか別世界に迷い込んだような不思議な感覚に包まれるのです。 瑞風の旅が贅沢なのは、ただ豪華な列車に揺られるだけではなく、こうして歴史の深みに触れ、その土地に息づく文化や人情を直接体験できるところにあります。石見銀山の町並みを歩き終えたとき、あほまろは「旅とは記録ではなく記憶の積み重ね」だと、改めて感じたのでございます。 そして、車内での夕食タイム。 京都の老舗料理屋が腕を振るった豪華会席料理が、まるで舞台の幕が上がるかのように一皿また一皿と運ばれてまいりました。繊細な盛り付けと、旬の素材が奏でる味の饗宴は、口にするたびに「これぞ贅沢」というため息を誘いました。 そして極めつけは、なんと車内でいただく鱧と松茸の鍋料理。車窓に流れる闇夜を背景に、熱々の土瓶から立ちのぼる香りは、まるで秋そのものを閉じ込めたよう。瑞風という舞台装置の中で味わう京都の粋は、旅の記憶に深く刻まれる一幕となりました。 「松茸に 鱧を浮かべて 秋しるし 盃なくとも 酔うは風情よ」(阿呆人也) 瑞風の食卓に、銘酒が誇らしげに並んでおりましたが、あほまろと息子は既に完全に酒を断っております。そこで差し出されたのは、選び抜かれた高級玉露のお茶。 盃を手にする代わりに、茶碗から立ちのぼる湯気を静かに見つめ、一口含めば、まろやかな旨みが口いっぱいに広がり、心までも澄み渡るようでございました。豪華列車の晩餐に似つかわしく、酒に勝るとも劣らぬ至福の一服。かつての酒席を懐かしみながらも、「これもまた新しい楽しみ方だ」と、あほまろはしみじみ感じたのでございました。 Memo iPhone 16 ProMAX Leica M11 APO-SUMMICRON-M f2.0/35mm ASPH. TRI-ELMAR-M f4/16-18-21mm ASPH.